アリストテレス 生物学の創造
アリストテレス 生物学の創造
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『アリストテレス 生物学の創造』は、ロンドンの名門インペリアル・カレッジで教えている進化生物学の教授が『英訳アリストテレス全集』の第4巻「動物誌」を丹念に読み、その内容と現代科学の繋がりを論じた本だ。 正確には『動物誌』だけではなくて、生物学に関わる巻(と、おそらく論理学に関わる巻『オルガノン』)も読んでいる 1968年から73年にかけて、出隆監修・山本光雄編集『アリストテレス全集』全17巻が岩波書店から出版されました。2013年から、同社創業100周年の記念出版として、『新版アリストテレス全集』が刊行されています。編集委員は、内山勝利・神崎繁・中畑正志の3人です。 アリストテレス全集8
動物誌(上)(金子善彦・濱岡剛・伊藤雅巳・金澤修訳) アリストテレス全集9
動物誌(下)(金子善彦・濱岡剛・伊藤雅巳・金澤修訳) アリストテレス全集10
動物論三篇
動物の諸部分について(濱岡剛訳)
動物の運動について(永井龍男訳)
動物の進行について(永井龍男訳)
アリストテレス全集11
動物の発生について(今井正浩訳)
アリストテレス全集12
小論考集
色彩について(土橋茂樹訳)
聴音について(土橋茂樹訳)
観相学(土橋茂樹訳)
植物について(土橋茂樹訳)
異聞集(瀬口昌久訳)
機械学(和泉ちえ訳)
分割不可能な線について(和泉ちえ訳)
風の方位と名称について(村上正治訳)
メリッソス、クセノパネス、ゴルギアスについて(村上正治訳)
担当編集者から「アリストテレス、相当すごい」と聞いていたので、何がすごいのかを確かめたくなって読んだ。
ひとことで言うとアリストテレスの凄味は「経験的世界から真理を抽出する方法を知っていた」ということに尽きる。現代に生きる私たちは、膨大なデータや実験を通じて初めて得た情報だけを「正解」と信用している所があると思う。でも2400年前を生きたアリストテレスに便利な科学技術はなかった。自分で浜辺を歩き、捕まえた海洋生物を解剖し、仲間と議論し、理論をまとめて体系をつくった。その結果は、21世紀の科学的検証にも耐えうるほど「当たっていた」。
これはとても重要な知らせだと思う。私たちの頭というか認知能力には限界があるので、どんなに技術が進歩しても「未知」は消えない。重要なのは道具やデータを完璧に集めることではなくて、各々が「科学的態度」で物事に当たること、これしかない。正解のはっきりしない問題に向き合うための鍵は、身近な自然をもっとよく観察することにある。そう教えてくれる本です。大著ですが、12時間くらいあれば読了できると思います。
「12時間くらいあれば読了できると思います」
挑戦的だ
2023/12/26
12時間で読んで、その全貌を解像度高く理解することが出来るなんて思わない
「ひとことで言」っている時点で、ウソだ
「ということに尽き」るか、ボケ。「ということに尽き」ないわ、アホ
「体系」なんて作っていないわ、アホ。そこにあるのはなんとしても真理を追求するのだという「姿勢」だ、ボケ
ということで、全然読めていないのがわかる
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目次
上巻
《エラトー書店にて》
アリストテレスの生物学との遭遇。そして、本書のねらい。
《島》
アリストテレスはなぜ生物を研究しようと考えたのか。既存の自然哲学に不満を抱き、プラトンの観念論にも背を向けた彼は、レスボス島で理想的な研究フィールドに出会う。 《人智の及ぶところ》
動物の世界は広大だ。動物学をゼロから築き上げたアリストテレスは、生き物についての知識をいったいどこから得ていたのか。
《解剖》
アリストテレスの解剖学的記述には、後世の多くの解剖学者たちが魅了されてきた。同時に、驚くべき正確さの傍らに明らかな不正確さが共存するという問題や、彼の観察の膨大さに翻弄されてきた。
《自然》
古代ギリシア人にとっての「自然」(ピュシス)とは何か。アリストテレスは机上の哲学だったそれまでの体系を離れ、ピュシスを解明する遠大な「研究プログラム」に着手した。
プリニウス風の博物誌ともリンナエウス式の分類法とも本質的に違っていたアリストテレスの分類体系について。そして、そのねらい。
アリストテレスは自然学を行なう方法論として、彼自身が「論証」と呼ぶ知的構造を用いる。彼の三段論法的推論の威力とその限界について。
《鳥の風》
動物の各部はなぜ必要かという問いの答えを、アリストテレスは比較生物学と目的論によって導き出そうとした。彼の見出した機能と構造の関係、および自然の経済性の原理について。
《コウイカの霊魂》
アリストテレスが生物と無生物を隔てるもの——霊魂——について語るとき、彼は生体内の機能、とりわけ生理機能とその自己制御について語っている。
《泡》
アリストテレスの発生生物学。一見して何ともつかない材料が、いかにしてすべての器官を備えた生き物に「なる」のか。
参考文献リスト
参考文献解題
用語集
I 専門用語/II 本書で言及された動物
下巻
《ヒツジの谷》
遺伝や変異、性決定、先祖返りについてのアリストテレスの理論は、思弁的ではあったが、ありうべき血の通うシステムを精巧に描きだしていた。
《カキのレシピ》
アリストテレスが奇妙にも自然発生論をもちだして説明づけている生き物たちがいる。なぜ彼は自身の体系をねじ曲げて、一部の生物の自然発生を信じたのか。
《イチジク、蜜蜂、魚》
アリストテレスは生物の生活史を世界全体の動的平衡とサイクルの中に位置づけ、環境の要請と動物の体の要求を見事に関連づけていた。十分に説明がつかない生物種は、彼をもっとも悩ませ、かつ魅了した。
《石の森》
進化論を含まないアリストテレスの生物学は忘れられた。しかしその影響はリンナエウス、キュヴィエを通じてダーウィンへ、そして現代の生物学へと引き継がれている。
《宇宙》
アリストテレスの生物学には群集生態学が欠けているように見えて、そのことは彼の生物学と政治学、形而上学、倫理学などを結ぶ補助線でもある。その全体は壮大な「宇宙の目的論」のヴィジョンをなしている。
《ピュラー海峡》
彼の遺産はなぜかくも徹底的に忘れ去られたのか。一七世紀の科学革命にまでさかのぼり、アリストテレス評価の変遷とその妥当性を再考する。
補遺
I アリストテレスの動物一二種と、六つの形態学的特徴のためのデータ・マトリクス
II 胎生四足類(哺乳類)の栄養(troph?)摂取とその配分経路
III 知覚と動作のCIOMモデル
IV アリストテレスの心臓—肺の体温調節サイクル
V アリストテレスの生活史データ——胎生四足類と鳥類
VI 生活史の特徴間の関係を現代のデータを使用して図示
謝辞
訳者あとがき
図版について
参考文献解題
索引